『133キロ怪速球』

(山本昌著、ベースボールマガジン社、2009、800円)
2010年秋、プロ野球はセ・パとも上位3球団が熾烈な優勝争い。
私が20年来応援する球団・中日ドラゴンズの快進撃を支える救世主と言えば、
8月7日の今期1軍初昇格以来5勝負けなし、プロ入り27年目の山本昌投手。
(9月4日に最年長完封記録も更新)
そんな、山本昌投手の自著は、ドラゴンズファンならずとも、読んでほしい一冊。
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<概要>

挫折の野球人生の始まり~プロ入り~クビ寸前から200勝投手となるまでを振り返った
「ギリギリ通過の野球人生」の軌跡(§1~3)がメイン。
その他、心に残る試合(§4)、高校野球の監督、中日の歴代監督、
そして米国野球留学時代の恩師・アイク生原氏への感謝(§5)、趣味のラジコン(§6)、野球の持論(§7)の構成。

<おすすめ>

山本昌投手が米国留学でスクリューボールという武器を身につけたことは、
プロ野球ファンには有名ですが、その米国留学裏話が面白く。
・入団5年目の米国1A野球留学は戦力外同然の「島流し」。
・伝家の宝刀・スクリューボールを習得できたのは、
練習中に遊び半分でスクリューボールを投げていたマイナー1Aの内野手・ヨゼフ・スパグニョーロのおかげ。
・1Aのオールスターでの活躍で、メジャーへのオファーがあったが、
中日の投手事情で星野監督に日本へ呼び戻された。(日本人初メジャーリーガー・山本昌は幻に!!)

<感想>

随所に、山本昌投手の人柄の良さが出ている1冊です。
あとがきに出てくる「僕なんかでいいんですか?」というフレーズは、
もともとプロになれるとも思っていなかった、球速も遅く、
一度はクビになりかけたプロ野球選手が、200勝投手となってもなお、
常に持ち続けている謙虚さの証。
10年連続200本安打に邁進するイチローのような「天才」も凄いと思いますが、
私のような「天才じゃない」人にとっては、より山本昌投手に共感できます。
また、長年のプロ野球人生でわかったという
「1流と3流の違いは自分自身を見つめる鏡の有無」という言葉は、
野球選手のみならず、社会人全般に該当すると思います。

<まとめ>

タイトルの「133キロ」とは、速球派ではない、山本昌投手を象徴するワードであり、
山本昌投手自身の経験則でプロ野球の投手がストレートで勝負できる最低限の球速、
「全力で投げて133キロが出なくなったら引退する」とも公言しています。
数々の最年長記録を塗り替える(工藤公康投手に続く)球界No.2のベテラン。
それゆえ、毎年のように、メディアでも「引退」のフレーズがちらつきがちですが、
そんな山本昌投手の唯一残された目標は「日本シリーズでの勝利」とのこと。
今年、現状の活躍が続けばリーグ優勝、日本シリーズでの登板も夢ではありません。
ドラゴンズファンとしても、山本昌ファンとしても、その夢が叶うことを願ってやみません。