『コーチングのプロが教える「ほめる」技術』

(鈴木善幸著、日本実業出版社、2002、1300円)
コーチングのプロによる「アクノリッジメント(存在承認)」の本。
会社などで部下や後輩のいる人は是非一読を。
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コーチングは、相手の自発的な行動を促進するコミュニケーション技術。
「アクノリッジメント」は、そのコーチングの技術の一つで、相手の存在を認める行為、
言葉により、相手にエネルギーを供給することです。
具体的には、ほめる、声をかける、挨拶する、贈り物をするなど。
人間が本能として持っている、集団の一員としての不安を払拭するとともに、
前向きな行動に結びつける効果があります。

<構成>

本書では、1章でアクノリッジメントの必要性、2、3章で共通的なアクノリッジメントの方法、
4章で4つの性格タイプ別のアクノリッジメントの方法、
5章で相手の立場に応じたアクノリッジメントの方法について述べられています。
また、プロローグと6章で、部下や息子との関係に悩む田中課長が、
コーチング研修を受けて変わっていく姿について、小説タッチで描かれています。
(1章から5章の内容の実践例という位置付け)

<役立ちポイント>

以下、役に立ちそうなアクノリッジメントの方法の抜粋です。

【共通的なアクノリッジメント】

・相手が褒めてほしい言葉を見極めてほめること
・常日頃任せられる仕事を探して、仕事を任せること
・YouスタンスではなくIスタンスでほめること
・第三者への紹介も重要なアクノリッジメント
・怒る(for me)ではなく、相手の成長を願い、期待と共に行動上の非を叱る(for you)こと
・相談されたときは、自分で結論を出さずに相手の答えを求めること
・一方的な助言はせず相手にノーという選択肢を与えること
・相手を気遣い「重要感」を感じさせること
・ほめなくても観察を伝えること
・頻繁に声をかけること
・自分の意志で挨拶すること
・ときにはアドバイスせずに相手の言うことをそのまま繰り返すこと

【タイプ別のアクノリッジメント】

・人間には4つの性格タイプがあり、タイプ別に適切なアクノリッジメントの方法は異なる
・「コントローラー」には、その人自身ではなく外側をほめること、逆に苦言を呈すること
・「プロモーター」には、感嘆符をつけてほめること
・「サポーター」には、不満が爆発しないように、どんな小さなことでもほめること
・「アナライザー」には、専門性を認めつつ、具体的に明示してほめること

【立場別のアクノリッジメント】

・若手には、理由を説明すること
・新規参入者をチームに溶け込ませるには、抱いている不安と期待を早期に伝えること
・年上の部下には、相談すること
・上司には、報告・連絡・相談に加えて、賞賛すること

<感想>

最近、職場に後輩が増えてきたので、必要性を感じて読んでみました。
この本は以前から読んでいたのですが、ある程度社会人生活を送り、読み返してみたら、まさに目から鱗の内容でした。
上司にも「アクノリッジメント」を意識している人もいれば、いない人もいることを実感。(今の上長は前者です)
部下の立場から言えば、アクノリッジメントしてくれる上司の下で働きたいものです。
本のおすすめ度は★★★★★
出版は2002年ですが、読みやすくて役立つビジネス書の名著です。