(島悟著、日本経済新聞出版社、2007、830円)
ストレスの多い現代。とりわけ、IT業界(SE)は心の病が問題となっており、
「自分自身でストレスに気づき対策をとること」のみならず、
「周囲の人間がメンバーのメンタルトラブルの早期発見に努めること」が
重要となってきています。
本書は、主に後者について書かれた本で、
職場の管理者、人事労務担当者向けのメンタルヘルス入門書。
職場のメンタルヘルスの重要性に始まり、ストレスによる心の病の表れ方の解説、
管理者がメンタルトラブルを抱えるメンバーへ対応する方法について、述べられています。
<構成>
1.なぜメンタルヘルスが重要か 2.心のトラブルが起きるメカニズム 3.知っておきたい心の病 4.組織でメンタルトラブルを防ぐ 5.管理者が知っておきたいメンタルトラブル予防法 |
<ポイント>
1. ストレス反応のモデル
ストレス反応は、以下のようなモデルで表されます。
「個人要因」(性格、対処方法、ライフスタイル、体質など) ↓ 「ストレス要因」――→「ストレス反応」→「疾病」(身体疾患、心身症、心の病) ↑ 「支え」(家族、職場など) |
管理者としてのケアは仕事上の「ストレス要因」と「支え」が対象となります。
2. ストレス反応として見られる反応
ストレス反応には以下の3種類があります。
(1)身体的反応 頭痛、動悸、胃痛、腹痛、微熱、咳、吐き気‥ (2)心理的反応 不安、イライラ、集中力低下、抑うつ、自己評価の低下‥ (3)行動面での反応 過食、飲酒量増加、多動、多弁、引篭り‥ |
上記の症状の顕在化に加え、勤怠状況(無断欠勤、月曜の遅刻・欠勤)、仕事上の事故、能率低下の状況より、
メンバーのメンタルトラブルの早期発見が可能となります。
3. NGな話の聞き方
・仕事の悩みだけ取り上げる
・頑張れと励ます
・お前だけではないと励ます
・何かよいアドバイスをしようとする
・オレも若い頃は…と励ます
・運動を進める
・酒に誘う
4. 上手な話の聞き方
・相手のポジティブな要素を示す
・「疲れ」「ストレス」といった言葉を選ぶ
(メンタル、精神科等の用語は用いない)
・心配している旨を伝える
・評価面談ではない旨を伝える
・面談の時間を十分にとっている旨を伝える
・話してくれてありがとうと伝える
・産業医にも伝えることを勧める
(管理者が抱え込まないこと)
<感想>
本書は管理者向けの本ですが、同時にメンバー向けの本でもあります。
社会人になって、少なからず同僚がメンタルトラブルに直面している状況に遭遇し、
また、悲しい思いもしましたが、同僚としてそのストレス反応に気付くことができていたら、
管理者に対策を求めるなど、良い道が開けていたかもしれません。
そういう意味で、社会人として「メンタルヘルス」は必ず知らなければいけない事項であり、
本書は必読です。